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2. 病理組織学的パターンを身近なものに例えてみよう
病理組織診断において、全体構築や浸潤細胞のパターンや組み合わせから診断を導きだすという作業が重要であることは言うまでもありません。しかし、なかなかパターンを覚えられなかったり、組み合わせを考えるのが難しかったりすることもあるし、手がかりになる所見だけで暗黙知的に手軽に診断ができないものか、という向きもあるかと思います。そんな時は、目の前にビジュアルとしてある所見を身近なものに例えてみると、人間は覚えやすいものです。そのような例を挙げてみます。
1) Church spire pattern
”Stucco keratosis”の増殖パターンは教会の尖塔(church spire)が連なったように見えます。
Stucco keratosis | 天草 崎津天主堂 |
2)Tadpole-like appearance
汗管腫の胞巣がオタマジャクシに類似していることに由来します。
Syringoma | オタマジャクシ(Tadpole) |
3)Coat sleeve-like appearance
血管周囲性細胞浸潤のパターンがコートの袖口に類似していることから名付けられました。
Annular erythema | 外套の袖(Coat sleeve) |
4)Palisade pattern
神経鞘腫に見られる特徴的な細胞配列に対し、観兵式での兵隊さんの隊列になぞらえて付けられました。
神経鞘腫(Schwannoma) | バッキンガム宮殿の衛兵交代式 |
5)Storiform pattern
隆起性皮膚線維肉腫や悪性線維性組織球腫の構成細胞が花筵の模様に類似した特徴的な配列を示す有様に対して付けられました。
隆起性皮膚線維肉腫 | 花筵 |
まだまだ面白い例えが沢山あります。先人たちがその鋭い感性から名付けた名称は、なるほどと頷けるところがあります。しかしながら過去の報告に準拠するのも良いのですが、皆さん自身の感性で、自身で覚えやすい例えを見つけてみるのも楽しいですよ。